また、教育勅語が明治天皇の名で発せられたことを踏まえ、御製にも目を向ける。御製から、変わりゆく世の中や人々の暮らしに向けられた思いを読み取りたい。ただし、一首の歌から特定の政策への意図を決め付けることは避け、成立事情や関係する史料とともに考える姿勢を大切にしたい。
前著『教育勅語研究』では、原文と現代語訳を示し、語句や各節を詳しく解説した。本書にも原文と現代語訳を掲載するが、詳しい語釈は前著に譲る。そのうえで、成立の背景と、明治・大正・昭和を通じて変わった受け止め方を中心に掘り下げていく。前著を読んでいない方にも、本書から考え始めていただける構成を目指した。
後世の政治や軍事との関係を考える際には、教育勅語だけに説明を求めず、一部の日蓮主義者による国家改造思想など、同時代の別の思想にも目を向ける。人物や団体ごとの違いを確かめながら、それぞれが何を支えたのかを検討したい。
本書では、史料によって確認できることと、そこから私が読み取ったことを区別して述べる。読者の皆様には、私と同じ結論を持つことよりも、判断の根拠をともに確かめていただきたいと思う。
教育勅語を、書かれた時代と、読まれ続けた時代のなかに置き直す。その作業を通じて、「善か悪か」という問いを、もう一歩深く考えてみたい。