○ 天宇受賣命 この大神の、御系統の事は、前段に述べました故に、こゝには略しますが、天照大御神の、天の窟に入り賜ひし時、石戸の前にて、神憑して、巧に俳優を作し賜ひ、其御徳によりて、天の石戸の、開らけし者にて、この天宇受賣命の、久志備即ち霊妙の、優れさせ賜ふは、この時の事実により其一班を窺ひ奉るに、足るのである、これ神憑りの始である、亦歌舞音曲は、凡てこの時に始り、漸く変遷して、今日の諸遊芸と、成たのである、故に故来より、遊藝を以て家業とせる人々の、祖神として、この大神を祭り奉るは、全くこの縁由より、出し者にて、最も正確の根拠に、出た者である、因て上達と、繁栄とを祈るは、この大神に、願ひ奉らねば、ならぬのであります、
亦この天宇受賣命は、天孫邇邇岐尊が、皇祖の神勅によりて、この国土を、統治し給ふとして、御降りの時には、五供緒の神の、一柱に座まして、女神ながらも、御供を五部に別ちたる、其一部の長にして、勇武の雄々しく、優れさせ給ふも、この時の事実によりて、推察し奉らるゝのである、此の如く勇猛の、御精神でおわし乍も、一方面にては、親和を守護し給ふ神となり、この天神の、宮中を守り賜ふ神魂を、大宮能売命と、申上奉りまして、今宮城の神殿に祭らせ給ふてある、これは神慮の至善醇美は、発して善言美詞となり、君主と臣民との間を和げ、和気藹々として一致し、国家の益隆盛に至るも、一縣一郷の親和するも、及ぼしては世界の平和となるも、悉くこの御神徳に因るのでありまして、又啻に君臣の間のみならず、至善醇美の神徳の、感孚するに随ひ、父子夫婦、兄弟、朋友の間も、自ら発する所の言語は、善言美詞となり、互に親睦して、向上発達し、益栄へ行くは、悉く皆この大神の、専ら守らせ給ふ所であります、此の如き御神徳に因て、古来より愛嬌を守り賜ふ神として、商人の商売の繁昌を、祈り奉りますも、全くこのわけに、據るのであります、