第38
原文
謹みて按ずるに、神州は太陽の出づる所、元気の始まる所にして、天日之嗣、世々宸極を御したまひて、終古易らず、固より大地の元首にして、万国の綱紀なり。
誠に宜しく宇内に昭臨し、皇化の暨ぶ所、遠邇有ること無かるべし。
而るに今、西荒の蛮夷、脛足の賤を以て、四海に奔走し、諸国を蹂躙し、眇視跛履、敢て上国を凌駕せんと欲す。
何ぞそれ驕れるや。
地の天の中に在るや、渾然として端無く、宜しく方隅無きが如くなるべきなり。
然れども凡そ物には自然の形体有りて存せざるは無し。
而して神州は其の首に居り。
故に幅員甚しくは広大ならず。
而して其の万方に君臨する所以のもの、未だ嘗て一とたびも姓を易へ位を革めざるなり。
西洋の諸蕃は、其の股脛に当る。
故に舶を奔らせ舸を走らせ、遠しとして至らざるなきなり。
而して海東の地、西夷の名づけて亜墨利加洲と曰ふ者に至りては、則ち其の背後なり。
故に其の民愚戅にして、為す所有る能はず。
是れ皆自然の形体なり。
現代語訳
謹んで考えるに、神州は太陽の出るところ、元気の始まるところである。
天日の嗣が代々宸極に臨まれ、はるか昔から変わることがない。
もとより大地の元首であり、万国の綱紀である。
まことに、あまねく世界を照らし臨み、皇化の及ぶところに遠近の隔たりがあってはならない。
ところが今、西方の荒れた蛮夷は、脛や足ほどの賤しい分際でありながら、四海を奔走し、諸国を踏みにじり、片目で見、びっこを引くようなありさまで、あえて上国を凌ごうとしている。
なんと驕ったことか。
地が天の中にあるさまは、混然として端がなく、方角も隅もないかのようであるべきだ。
けれども、およそ物には自然の形体があって、それのないものは存在しない。
そして神州はその頭に位置する。
だから国土はそれほど広大ではない。
それでも万方に君臨するゆえんは、いまだかつて一度も姓を変え、位を革めたことがない点にある。
西洋の諸蕃は、その股や脛に当たる。
だから船を走らせ、遠いところとして至らないところがない。
さらに海の東、西夷が亜墨利加洲と名づけている地に至っては、その背中である。
だからその民は愚鈍で、なすところがない。
これらはみな、自然の形体なのである。