一般財団法人 野萩青少年育成財団

新論

先行公開・2026年10月11日

第3回 第39

第39

原文

是れ其の理宜しく自ら隕越して、以て傾覆を取るべし。

然れども天地の気には、盛衰無きこと能はず。

而して人衆ければ則ち天に勝つは、亦其の勢の已むを得ざる所なり。

苟も豪傑の奮起する有りて以て天功を亮くるに非るよりは、則ち天地も亦将に胡羯腥膻の誣罔する所と為りて然る後已まんとす。

今天下の為に其の大計を論ずれば、天下の人は愕然として相顧みて、驚き怪しまざる莫きは、旧聞に溺れ故見に狃るればなり。

兵法に曰く、「其の来らざるを恃むこと無く、吾が以て之を待つ有るを恃む。

其の攻めざるを恃むこと無く、吾が攻むべからざる所有るを恃むなり」と。

然らば則ち吾をして治化洽浹し、風俗淳美に、上下義を守り、民は富み兵は足り、強寇大敵と雖も、之に応じて遺算無からしめば、則ち可なり。

若し猶未だしならば、則ち其の自遑自逸を為すものは、果して何の恃む所ぞや。

而るに論者は皆謂ふ、「彼は蛮夷なり、商舶なり、漁船なり。

深患大禍を為す者に非ず」と。

現代語訳

この理からすれば、彼らは自ら越度して、傾き覆るべきである。

けれども天地の気に、盛衰がないということはできない。

そして人が多ければ天に勝つのは、またその勢いのやむを得ないところである。

もし豪傑が奮い起きて天の功を助けるのでなければ、天地もまた、胡羯の腥い誣罔するところとなろうとし、そうなってのちはやむ。

今、天下のためにその大計を論ずれば、天下の人が愕然として顔を見合わせ、驚き怪しまない者がないのは、古い聞き伝えに溺れ、昔の見方に慣れているからである。

兵法に言う。

『その来ないことを恃むな。

わが、もってこれを待つものがあることを恃め。

その攻めないことを恃むな。

わが、攻めることのできないものがあることを恃め』と。

そうであれば、わが治化をあまねく行き渡らせ、風俗を淳美にし、上下が義を守り、民は富み兵は足り、強い寇や大きな敵であっても、これに応じて遺算がないようにすれば、よい。

もしなお足りないなら、自らいそしみ逸楽するものは、果たして何を恃むのか。

ところが論ずる者はみな言う。

『彼らは蛮夷であり、商船であり、漁船である。

深い患い、大きな禍をなすものではない』と。

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