一般財団法人 野萩青少年育成財団

守るべき国体とは何だったのか

先行公開・2026年10月11日

第2回 第2回 前書き(2/2)

もっとも、会沢を現代の民主主義者や平和主義者に仕立てることはできない。『新論』には身分秩序を前提とする考え方があり、異教や異国への厳しい排斥もある。その限界を認めたうえで、国体を語る際に人民の生活と国家の安全がどこに置かれていたかを読みたいのである。

本書は、国体に一つの正しい定義を与えて、歴史上の人々を一列に裁くための本ではない。『新論』から王政復古、五箇条の御誓文、神祇官と国民教化、教学聖旨、教育勅語を経て、昭和二十年に至るまで、何を国の中心に置いたのか、その中心を誰が解釈したのかを考える本である。

その際、私は歴史的な事実と、自分の受け止め方を区別する。御製に表れた思いを政策のすべてと同一視せず、軍部、政府、天皇をそれぞれ一枚岩とも考えない。確認できない逸話で人の内面を断定することも避けたい。批判を弱めるためではない。国民の生命をどう扱ったかという問いを、確かな言葉で残すためである。

敗戦によって失われるものは多い。しかし、生き残った人々がいれば、国を立て直し、文化を受け継ぐ可能性が残る。継承する人々そのものを失うことは、それとは異なる。本書を貫く私の立場は、ここにある。

先行公開一覧に戻る