一般財団法人 野萩青少年育成財団

エジプトと西アジアの神話を比較する

先行公開・2026年10月11日

第2回 第2回 神話の年代――物語の古さと資料の古さ

神話を読む際には、物語が語られ始めた時期と、現存する文字資料の年代を分ける必要がある。後代の写本に古い伝承が含まれる場合もあれば、古代の権威を借りて新しい考えを表現した場合もある。文字が古いことだけで、別の地域の神話の起源だったとはいえない。

エジプトの『ピラミッド・テキスト』は、古王国時代の末期、紀元前3千年紀後半から王の墓に刻まれた葬送文である。中王国時代には棺に記す『コフィン・テキスト』が広がり、新王国時代以降には『死者の書』が用いられた。ただし、三者が完全に入れ替わったのではなく、古い文句や発想は形を変えて受け継がれた。

プタハ神の創造を語る「シャバカ石碑」は、第25王朝、紀元前8世紀末から7世紀初頭頃の資料である。古い文書を写したとする碑文の説明はあるが、その内容がどこまで古いかには議論がある。「古王国時代の原本がそのまま残った」と扱うことはできない。

メソポタミアの『アトラ・ハシース』は紀元前2千年紀の写本で知られる。『創世記』も複数の伝承と編集の過程を経ている。概ね古い資料から思想の展開を追えるが、例外として後代の資料が古い伝承を詳しく伝えることもある。比較では、年代だけでなく、資料の用途と伝わり方を確かめることが重要である。

出典・参照:『ピラミッド・テキスト』、『コフィン・テキスト』、大英博物館「シャバカ石碑」資料解説。

文・小山一夫(クンダリーニJP代表)

先行公開一覧に戻る