一般財団法人 野萩青少年育成財団

インドとイランの神話を比較する

先行公開・2026年10月11日

第2回 第2回 言語が示すつながり――似た音の先にあるもの

ヴェーダの古い賛歌は、サンスクリットの古い形であるヴェーダ語で伝わる。『アヴェスター』の言語はアヴェスター語である。両者は印欧語族のインド・イラン語派に属し、その内部ではインド・アーリヤ語群とイラン語群に分かれる。近い関係にあるが、一方が他方の古い呼び名なのではない。

語の関係は、響きが何となく似ているという印象だけでは決めない。多くの語に繰り返し現れる音の対応、語形の変化、文法などを調べる。例えばソーマとハオマ、祭儀を表すヤジュニャとヤスナには、共通の語に由来すると判断できる関係がある。祭官の名称ホートリとザオタルも重要な比較例である。

こうした対応から、分岐以前の人々が、祭儀や神々に関する一定の語彙を共有していたと考えられる。ただし、その共通期には完成した一冊の聖典があり、後に二分されたという意味ではない。「インド・イラン共通宗教」は、言語と伝承を比較して過去を復元する際の研究上の呼称なのである。

人々の移動については、中央アジアとその周辺を含む広い地域の言語・考古資料が検討される。紀元前二千年紀は重要な時期であるが、全員が一度に二方向へ移住した年を決められるわけではない。また、古代のアーリヤという自己呼称を、近代の人種分類と同じものとして用いてはならない。

言語の系統と宗教の交流も区別したい。シュメール語とアッカド語は同じ語族ではなく、神話も言語の境界を越えて伝わりうる。したがって、インド・イランと西アジアを、交流しない二本の「宗教の系統樹」に分ける説明は適切ではないのである。

出典・参照:Encyclopaedia Iranica「Indo-Iranian Religion」、ヴェーダ語・アヴェスター語の比較言語研究。

文・小山一夫(クンダリーニJP代表)

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