2026-07-01 著者:小山一夫
原文保存・内容校閲前/画像は元サイトから読み込みます。
昔書いた日記からいくつかアップします。
2003-6-17
勁と力-2
陳品三老師(1849-1929陳家溝第16世。陳氏一族の拳法を始めて理論付けた人物として知られる)の遺した「陳氏太極拳図説」の「人身纏絲正面図」に、「その勁はみな心に発し、内は骨髄に入り、外は肌膚に達す」とある。
「心」とは、「図説」によれば正中線上の鳩尾あたりに位置されているから、単純に心臓という意味ではなく、中心的な意味合いだと思われる。鳩尾といえば横隔膜周辺なので、私はこれを、「その勁はみな腹圧(腹腔内の圧力。腹筋・横隔膜の収縮・緊張によって上昇する。<三省堂提供「大辞林 第二版」より>)に発し」と解釈している。よく勁は足先から生ずると言う人がいるが、私は必ずしもそうとは思わない。なぜなら色々実験した所、片足立ちでも、鉄棒にぶら下がっていても、腹圧の調整だけで簡単に発勁が打てるからだ。故に、こちらの陳品三老師の解説の方が適当だと理解している。
だが、陳品三老師も「第33勢第四演手捶」にて、中段突を解説する際に、「右足は後にしっかりと地を踏む。『跟(コン)力』は、腿より逆行して脊骨第21節に至る。第21節より再び逆行して膀(ホウ)に至る。膀より右拳に到り、以ってその『拳力』を助けるなり」とある。この「跟」とは踵の意で、「脊骨第21節」は脊椎下端、膀とは膀胱つまり下腹部の事である。
ここでは左前屈立ちで右拳の逆突をテーマにしているので、右踵から発したパワーが右拳に至るルート(勁道)が説明されている。これは実地で検証するとよくわかる。私も過日、このあたりを確認すべく、自宅駐車場で夜何度も試していたのだが、一晩で踵骨にひびが入ってしまった。少林寺で石畳の床が震脚というか永年の修行僧の拳法鍛練によって凸凹になっている写真を以前見たが、鍛練には外功法を並行してやらなければと痛感した次第。つまりその時は内功のパワーに肉体がついてゆけなかった為にこのような怪我をした訳だ。
だが、確かにあの(「第33勢第四演手捶」)ような要領で打つとなると、踵への負担はかなり大きい。印象としては、十字勁ではないが、踵への圧力が同時に拳に乗ってくる。突き手と引き手のような関係の感覚だ。
だから、それは勁を増幅させる為の技法のひとつに違いないが、勁の源はやはり「人身纏絲正面図」にあるように「その勁はみな心に発し」と理解した方が良いだろう。
また、「その勁は~、内は骨髄に入り」という部分にも注目して欲しい。これは王西安老師の「中気が骨の中に入る」にも通じ、昨日の私の解釈にもひとつの裏付けとなる事だろう。