金持の一人っ子に生れ、親の莫大な遺産をそっくり相續し、親類にヤイヤイ心配し乍ら、本人は利殖などは考へたことがない。迷惑なものでも貰った様に金を追ひ散らして、今では長屋でのんびり、この方が俺には良いのさと膝をかかへて居る、学問は一通りもふた通りもある人なんだが、乞食の性命か?
切角申し分のないよいお嫁さんに来て貰ひ乍らその家からプイ。今では到ってつまらぬ女に貢いでもらって満足してゐる、この性命は何?
芳町の一流の芸者、金持の旦那が二人もあるのに、アパトで心中、相手は肉屋の若い衆、商賣柄、金持ばかりを相手にし乍ら、こんな結末を取るのも性命のなせる業と云ふものか、
