商人だって、その銭の苦勞に甘んじて、徹して、商人らしく銭の運かし方、金の方則をはっかり掴んで、商人らしくやればよいのに、何彼と、他の事に気を散らす。その為に、金を運転するのに無理が出る、出るから、又、その場その場の都合のよい方法で上塗りをして、益を苦しくなる、業の上塗りなんだ。
絵の具の調合に方則がある、三味線の三本の糸にさへ方則がある。金の運転にも方則がある、絵の具は絹地か紙本かで調合が違ふ。三味線は歌ふ相手によって、調子を変へねばならぬ、金の運転も世の中の状態によって変へねばならないものである。
商人のくせに、金の運転が厭だと云ふ。武士のくせに刀を腰にしてゐるのがいやだと同じだ。商人なら、失敗しても笠の台が飛ばないが、武士が刀を抜いてから、ヤリクリ付かぬ様では、いのちがいくつあっても、たまるものではない、金の運転の為には義理人情は抜き、只、金と事業の方則のまま、商賣に狂はなくてはならぬ、
