だから、俺は「三日坊主大賛成」と言ったんだ。かまはないから何でもやってみろ、飽きたらやめて、すぐ別のに取り付け、それも「いや」になったら又、別のだ。只、人が三年で一人前になるのを、一年半で覚えるのだ。それが出来てこそ普通の頭だ、他人が三年掛かるのを一年で心得て終うことだ、そして次の事をやるんだ又、次の事をやる。人の三倍さ、此の様にやれよと教へてくれたのは親父だ、兄弟、男ばかり五人の中、ネコのシッポの俺にだけこんな事を教へた親父は残念乍ら俺の十九の時に死んだから、遺訓を尊んで?やった三日坊主振りを見せてやれなかった。
兎に角、早く俺と云う型をきめることはないと考へて、徹底的にやっては徹底的にやめた。
此の世の中、やってみたい事は、山程たくさんあるんだ。それを人並みに三年もかかって居たんではどうなる、そんな悟りの悪るい頭ならブタに喰せた方が功徳になる、
そして、その覚えたことを自分の職業にしたり、オマンマの種子にして暮そうなんてケチな根性はよせ。
「まだ君の御兩親は此の通り健在なんだ、今、君が扶養する義務もあるまい。こんな時こそ自由だし、何をやっても疲れない時だし、又、少し位い失敗してもお父様が羽織ハカマで出て謝れば万事納る時だ、その間にどんどん失敗してみることだ」
そして、世の中はこうだ、此の商賣のカラクリは斯うだ、あの商賣のコツはこうだ、人情はこう、金の方則はこうと知って、それから、親父の商賣の仕方を正しく批判出来るくらいではなけりや君は馬鹿だよ。
伜氏はぼんやりした顔だし、兩親もあきれた顔して帰って行った。判ったのか判らんのか。「ムダメシ食ひ」と言う事がある。相撲とりの卵を連れて来る、十四五から仕込む、やっと役にたって土俵の上に星を稼ぐ様になるには二十二、三からだ、先七年はむだめし食ひさ、然しこの無駄飯が尊いのである、二十二、三の太い奴を連れて来て仕込んでも駄目なそうな。薹が立って居るかも知れない。一人前にならぬそうな、根情を仕込むのに、「むだめし」が大切な訳だ。
