和漢辞典の最後の字は何だか知ってますか。和漢辞典は、「あいじよう」と引いて、「愛情」「なだれ」と引いて雪崩と出てゐるあれです。此の辞典の最後の言葉は何?わんりよく-腕力なんです。
腕力は最後か、最後には腕力を使うものか、とにかく、腕づくで解決は最后のこと、腕づくと言へば、桃山時代だったか知らん、あの謾画を書いて、有名な坊さん、何と云ったっけ、そうそう鳥羽の僧上さ、此の坊さん、死んだら、隨分と賤産が殘った。お寺だの寺宝だの檀家だの、後継者をきめてなかったので、「泣き乍ら良い方を取る片身わけ」で弟子達が大勢集まって、「俺が」「オレガ」と、葬式そつのけにして、爭ひが始まった、
最初は坊主らしく温和しく話し合ふ約束だったが、矢張りすごいけんまくで罵しり合って、腕まくり、撲り合ひになりそうになった、兎に角遺言状がある筈と探す、アッタアッタ封を開くと、半紙一枚、一同カタヅを呑んで用いてみると、只一條、「遺産は腕づくで取れ」一同ぼんやりして終った。今更らに恥かしいやら、先んだ師匠にズバリ遺言で云はれては、今更らに腕づくでもあるまいと、平和解決とはメデタシメデタシ、
兎に角にくらしい僧上である。
