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「片片草」 『策略』創作だから架空の物語り-3

著者:若月佑孔 / 元ブログ投稿日:2025-07-22

 

武王は剱を納めて、葦白を椅子に坐らせると、「嗚呼葦白よ、お前は知ってゐたのか、歌丘では戦ひでは勝った、然し、それは決して、勝利ではなかった、趙馬が逃れ去っては、戰勝とは云へない。

 

趙に趙馬が居る限り此の楚は決して安穏ではないのだ、趙馬の策戰に勝つ者は、此の俺しか無い。此の度の十五城は目的ではない、求めたのは、趙馬の死だったのに、最後まで追ひ詰めて逃げられた。


誰もこれを知らぬ。趙馬の在る限りは、趙は楚にとって恐ろしい敵だ、眼の無い彼等は勝った、勝ったと云って居る、葦白よ、お前の策をきかせてくれ」


講和成立の会は盛大だった。

趙王は床を膝行して来て、臣下の禮を行うのに、楚王はそれを起立させて禮を受け取った、勝った王としての敗戰の王に対する寛大と親愛を現はすものであり、三国からの使節達も武王萬才を唱和して、宴会になった。宴が盛大な音樂で始められた時、何時の間にか一人の趙の部將が楚王の前に跪坐して、賀を献すると見せるや、匕首をさっと胸元に突き付けて、袖を掴んで終った。「ワッ」と席に居る者全部總立ちなったが、皆、一歩も動かれない。

「俺は趙馬だ、趙は今度は負けた、然し、俺はまだ負けて居らん、どうだ、侵し取った十五城を返せ、返さぬなら、俺は王の血を浴びて共に死ぬだけだ、さあ、返すか?」
武王は靜かに云った。
「返そうではないか、よいから、お前は席に退って呑め、此処は講和の席だ!!」


武王は都に帰ると早速趙王に使ひを走らせて、十五城を還すと宣言してやった。趙王も隣三国もアッと驚ろいて終ったのである、趙王は必ず武王が趙馬の無禮を責めて再戰爭と、況々としてゐたし、隣三国の王達は、武王の一旦した約束は實行する信義に感嘆したのである、十五城は趙に帰された、然し、趙、斉鄭魯の国からは楚を盟主と仰く使節が臣説をとって来たし、趙馬は先分面目をほとこして、今では楚王の無二の武將としして仕へてゐるのである。


春の或る日、武王と盡来の士葦白は遠山の残雪を眺め乍ら、茶を喫んだ。
此の文は支那兵法史研究の余暇に使ったもの、仮空のはなしである、時代国名とも全部思ひ付きのままの物である、

 

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