政治の責任者が斯の様で経済界がフラフラ株が上がった下った、大衆が躍らされて、大所が一手に儲けている、インフレにしてから締めるのに、ヤレ神武景気だ、ナベ底景気だと言葉を作ると、大衆がワーッと応じて動く、自分じやその潮に乗るまいとしてゐるが風潮に押されずにすまない、一緒になってアップアップだ、自分が堅くやってゐるのに、受取った手形が、今日その取引相手が失敗してパアの空手形になって終はないとも限らない。
今、送り出す高価な品物が先方に到着しても金が手に這入るかどうか判らない、三ヶ月後の手形が金になるか?切角賣って儲けても次の値上りで仕入をすればその儲もパア心配なんだよ、不安なんだよ。
全くメチヤクチヤになった、人の信義も守られないし、道徳もない、親子の情愛まで変化させられて、老後の自分の生活の頼り杖になってくれるかどうかも判らない、昔はそうなかった。親不孝の伜でも、親不孝をし乍ら、義務の觀念は有った。今では義務の觀念すらないのだから、親不孝なんて上品なことすら無くなりつつある。
昔は、固く正しくさへやってゐれば心配なかった。
努力が報はれた。だから、山に木を植えて、六十年百年の後の孫の代までの事を考へてやったし、味噌醤油の類まで、三年味噌五年味噌梅干なんかは十年前のを出せなんて言って居た。人間も悠長だし、希望を持ったにも十年二十年の後に期待した。
