意味と成り立ち 「いと」は程度を強め、「をかし」は趣、面白さ、美しさなどを表す。現代の「おかしい」の滑稽さだけとは重ならない。対象の細部に気づき、心ひかれる働きを読むとよい。
和歌一 心あてに 折らばや折らむ 初霜の 置きまどはせる 白菊の花
凡河内躬恒 『古今和歌集 秋下277』
現代語訳 当て推量で折るなら折ってみようか。初霜が一面に置いて、区別しにくくなった白菊の花を。
解説 関連歌:白いもの同士を見まがう細やかな発見から、「をかし」の鑑賞の姿勢を考える。 菊も霜も白いために見分けがつかない、という趣向。「心あて」は心配りではなく推量の意で、同じ「心」でも語によって働きが違う。
和歌二 大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立
小式部内侍 『金葉和歌集 雑上586』
現代語訳 大江山を越え、生野を通る道が遠いので、天橋立にはまだ足を踏み入れてもおらず、文も見ていません。
解説 関連歌:機知に富む言葉の応酬という、景色の美しさとは別の面白さに注目する。 「いく」に地名と行くこと、「ふみ」に踏むことと文を掛ける。短い返答の中に複数の意味を組み込み、言葉の扱いの巧みさを示す。
現代の用例と使い分け 「霜と白菊を見分けられないという発想が、いとをかし」。古風な感想として使い、日常では「趣深い」とも言える。