意味と成り立ち 相手の存在を大切にし、愛情をもって接すること。「慈しむ」と書く現代語であり、仮名書きにしただけで古語形になるわけではない。守り育てる行いまで含めて味わいたい。
和歌一 銀も 金も玉も 何せむに 優れる宝 子にしかめやも
山上憶良 『万葉集 巻5・803』
現代語訳 銀も金も宝石も、何になろう。どれほど優れた宝でも、子どもに及ぶことがあるだろうか。
解説 関連歌:子の存在が財宝より大切だという価値の置き方から、慈しみの深さを読む。 「しかめやも」は及ぼうか、いや及ばない、という反語。物の価値と子への愛情を比べることで、取り替えのきかない存在として子を捉える。
和歌二 君がため 春の野に出でて 若菜摘む わが衣手に 雪は降りつつ
光孝天皇 『古今和歌集 春上21』
現代語訳 あなたのために春の野へ出て若菜を摘んでいると、私の袖に雪が降りかかってくる。
解説 関連歌:相手のために寒い野で若菜を摘む、具体的な行動としての愛情に注目する。 冒頭の「君がため」が行動の目的を明らかにする。春の若菜と残る雪が同じ場面にあり、贈る気持ちは、手間をかける姿として表される。
現代の用例と使い分け 「幼い子をいつくしむ」。単に「好きだ」と感じるより、相手を大切に扱う態度に重点がある。